Synergy

身体運動研究における“Synergy”概念とその射程
ベルンシュタイン問題
(1) トップダウンに変数を決定しているとすると、関節で10^2, 筋肉で10^3, 細胞で10^14もの変数を決めなければならず、非現実的である。
(2) 時間で切る従来の運動制御理論では、文脈に多義性を持つ。
身体運動は文脈に依存して組織化され、シナジーを前提すれば解決されうる、と先見した。
シナジー
特定の運動の達成において身体の各部位が連携協調することで、運動の自由度を減らす機能的構造・単位
これは一時的で柔軟な組織化で、課題特定かつ文脈依存の要素間結合を想定している。
Synergyの大きな流れ
CDとUCMの二つに分かれている。
CDは自己組織化理論を用いた次元圧縮・要素間結合
UCMは相互補償・要素間調整
補償について
Kelsoらの発話実験で、babの後のbの途中で下顎に負荷をかけた時、15-30ms程度で上下唇に素早い補償運動が観測された。
骨格筋→筋紡錘→Ia繊維→脊髄α運動ニューロン→筋収縮のような反射の中でも、非常に短いアキレス腱反射で30-40msである。
あまりにも早く、情報処理モデルに基づく生理学的な説明が困難であり、そのためUltrafast現象と呼ばれる。
この現象は発話・姿勢制御・眼球運動・卓球選手のスマッシュなどの調整に見られる。
Ultrafast現象を説明するために、筋肉と骨格にTensegrityのような機械的かつ受動的な結合を前提すると、今までのような電気的な反応とは異なる枠組みで議論できると考えられている。
観測由来ヒエラルキー
相互作用しあう部分システム間で、観測に有限時間を前提すると、観測中に環境が変化するために観測された環境は厳密には一致しない。観測に有限時間を前提しないと、時間相関のある変動やスケールフリー相関が説明できない。
部分システムの境界における観測由来のゆらぎの存在を考慮して、階層的なシステムの階層間の相互作用に積極的な意味を見出す。
階層構造を持つ対象に限定せず一般化したのが観測由来ヒエラルキーという。

UCM参照制御ーどうやらUCM空間を積極的に用いた制御方法らしいが、残念ながら論文が公開されていないらしい。

http://www.ieice.org/ken/paper/20130314DBCy/

http://www.uno.nuem.nagoya-u.ac.jp/~togo/

Mark L.Latash, et al. “Motor Control Strategies Revealed in the Structure of Motor Variability”
単語
Latash先生のUCMに基づく運動の解説。UCM解析の解説なのだが、Modeとかいう概念を導入している。
あと、それに基づいて銃を打つ時に重要な変数を同定する、とかいう話や、把持において回転方向の力の方が重要だ、とかいう話になっているが、途中から実験で駆り出された後に上を進められたので読めていない。

Scholz先生のResearch Article
“The uncontrolled manifold concept: identifying control variables for a functional task” PDF

Ruhr大学のD論(Martinさん)
“A dynamical systems account of the uncontrolled manifold and motor equivalence in human pointing movements” PDF

大阪大学宮崎研究室
拮抗筋肉による軌道、剛性の同時制御

http://robotics.me.es.osaka-u.ac.jp/MiyazakiLab/jpn/research/cooperation_task/index.html

http://www.seirei.ac.jp/web/teacher/ohgi/080428-2.pdf

シナジェティクス
「隷属原理」
それまで無関係であった多数の内部変数のうちの一部に不安定化が生じて、それを通じて残りの多数の内部変数の動きが支配され、その結果多数の内部変数の動きに統一的な関係性が生じる
「秩序パラメータ」
要素間の秩序の度合いによって生じるパターンを示す変数。例えば、位相差など。
「制御パラメータ」
パターンを生む外部変数外部変数、人自らの発達学習など

Kelsoの実験
メトロノームのリズム(=制御パラメータ)に合わせて両手の人差し指の運動(秩序パラメータ)を逆位相でくるくるさせていると、突然2.0-2.5Hzくらいで位相が揃う。

引き込み現象
ミクロな多数の要素の集まりの間に引き込みが起こり、特定の振動数と位相を持った大きな振動が生まれる。
マクロな規則正しい振動は引き込みによって系全体の振動を一つに揃えていく。

運動発達の自由度はFreezingからFine Tuningを経て大きくなる

運動制御の仮説

http://www.bekkoame.ne.jp/~domen/reflex.html

Mertonのサーボ仮説
緊張性伸縮反射が運動制御の部品であると考える仮説。現在は信じられていない。
γ運動ニューロンに与えられる。情報の流れは、γ運動ニューロン活動→筋紡錐→緊張性伸張反射(tonic steretch reflex:TSR)→α運動ニューロン活動→筋張力の発生→運動。

Povlovは脳を各種反射の相互作用に基づいて受動的に反応するだけの臓器ととらえていた一方で、Bernsteinは能動的な環境の探索が動物の脳の本質に近いと主張した。反射はデータの再現性を有する反応が得られるが、随意運動の本質を明らかにすることは出来ない。
(Bernsteinはこの考え方を発表したことによってロシア政府に危険思想扱いされている)

αモデル
Bizziらは脊髄後根を切断(求心遮断)しても、運動を覚えさせたサルが同じ運動が実現機能だったことから、緊張伸縮反射を介する必要はなく、αニューロンだけで随意運動が発現する、という説を提唱した。つまり、中枢の運動指令は、α運動ニューロンプールの活動レベルを変化させ、筋肉のバネ特性を変化させることにより、主動筋と拮抗筋のつり合い位置が変化して随意運動が発現する。屈筋、伸筋とのつりあい位置が関節位置となる。
アンチテーゼとしては、
(1) Latashは、Bizziの実験はα modelの求心遮断が起きたときの代替手段だと指摘している
(2) この手法だと、運動中の剛性が高いことを前提しているが、運動中も剛性が低いことが分かっている
全く何が何だか分からない。何がどこにあるのか。それぞれがどのような機能なのか。

Tetsushi Nonaka, Motor Variability but Functional Specificity: The Case of a C4 Tetraplegic Mouth Calligrapher. Ecological Psychology, Vol. 25, No. 2, 2013
単語
事故で四肢麻痺を患って以来、口に筆を咥えて書道を25年間続け、達人レベルに達したFumiyuki Makinoの運動解析。
冗長なコンフィギュレーション空間を取ってきたときに、うまいタスク変数を選べば、前者の分散構造がタスク変数を協調して安定化することを示した。
タスク変数の選び方はヒューリスティック、逆に言えば人間が見たときに自然である。
協調性の解析のために、UCM解析と言われる手法を用いている。2変数のUCM解析がここに説明されている。
肝心のUCM解析の部分が全く分からなかった。
謎の係数kたちで6次元が1次元に落とされていたように見えたが…?6次元→3次元なはずなのに。
1変数ずつ、それぞれの方向の分散を無視しているというならわかるが。
そもそもmultiple regression procedureって何だ?説明されてた?
UCMは何らかの拘束条件を前提しなければいけないはずなのに、拘束に関する言及が全く見られなかったように思えるのだが…

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